2025/5/12 COLUMN
パッシブデザイン5つの要素
~昼光利用~
自然の光を活かして、明るく快適に暮らす。
それが「昼光利用(デイライト)」の基本的な考え方です。
照明に頼らず、太陽の光を上手に取り込むことで、快適性と省エネの両方を実現します。
今回は昼光利用についてお伝えします。
夏は涼しく、冬はあたたかく。
そんな快適な暮らしを、機械や設備に頼らず、自然の力で実現する——
これが「パッシブデザイン」という考え方です。
<パッシブデザインとは?省エネで快適な住まいづくりの第一歩>
建物の配置・形状・プランニングなどを工夫し自然エネルギーを最大限活用・調節し省エネルギーで快適な暮らしを実現させていく設計手法です。
パッシブデザインには5つの要素があります。
今回はその中の 『昼光利用』についてです。
住宅のエネルギー消費の中で、照明の占める割合はそれほど大きくはありません。しかし、昼間の時間帯に電気照明を使い続けるのは「もったいない」ことです。
本来、太陽という“無料の照明”があるのに、それを活かせていないという意味での“もったいなさ”です。
また、自然光には以下のようなメリットがあります。
・室内が明るく広く感じられる
・生体リズム(体内時計)を整えやすく、健康に良い
・電気照明よりも、心理的に「快適」と感じやすい
◆昼光利用には次の2つの方法があります。
①採光手法
→窓等の開口から直接光を取り入れる。
②導光手法
→建物に入った光を、部屋の奥まで導く。
昼光利用の設計における原則は「多面採光」を取るという事で、安定した採光が得られます。
日中滞在時間の長いLDKは2面以上の窓を設け、洗面などの非居室では1面以上の窓を設けます。
その際、必ずしも“南向きでなくては”とこだわる必要はありません。
確かに南からの光は晴れた日にはたっぷりと降り注ぎますが、かえって明るすぎてまぶしくなることも多く、結局はレースカーテンやブラインドで調整が必要になります。
(とはいえ、日射熱を室内に取り入れて暖房に活かすという点では、この豊富な南の光はとても重要。**パッシブデザインの「日射熱利用暖房」**という観点からは、うまく活かしていきたいところです)
洗面所など北側のスペースに横長の高窓を設ける方法も有効です。
北からの光は柔らかくて安定しているので、たとえ曇りや雨の日でもふんわりとした自然光で十分に明るいです。
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もっとも一般的なのが「吹き抜け」です。
吹き抜けを設けると、上階に入った光を下の階の奥まで届けることができます。
空間に広がりや抜け感を与えるために採用されることも多い吹き抜けですが、昼光利用の観点でも非常に有効です。
また、パッシブデザインにおいてはこの吹き抜けが
・自然風の通り道
・柔らかな自然光を導く採光手法
・上下階で日射熱を共有する熱環境設計
としても活躍します。つまり、自然風利用・昼光利用・日射熱利用暖房の3つに対応できる重要な仕掛けなのです。
吹き抜けは、適切な設計さえすれば快適性と省エネ性を同時に高める強力な手法になります。
・その他の方法
吹抜によって隣の部屋に入って光を導く為に、建具の上に欄間やガラスを設けたり、透明や半透明のドアを使用する、また光を反射させるライトシェルフや光を下階まで運ぶライトウェル、光を柔らかく拡散させるため明るい内装にするなどがあります。
この2つをうまく組み合わせることで、「明るく、かつ暑すぎずまぶしくない」快適な空間がつくれます。
パッシブデザインの昼光利用では、この採光+導光のバランス設計がとても大切です。
昼光利用は、太陽の光という「自然の恵み」を、設計の工夫で上手に暮らしに取り入れるパッシブデザインの基本要素のひとつです。
照明に頼らず、日中を自然光で過ごせる住まいは、それだけでエネルギー消費を抑えられますし、なにより空間の明るさ・心地よさ・開放感が格段に変わってきます。
ただし、ただ大きな窓をつければよいわけではなく、
必要な場所に
必要な時間に
必要な量の光を
どう届けるかという視点がとても重要です。
それは、採光と導光のバランスであったり、窓の位置や高さであったり、壁や天井の色・素材であったりと、建築設計の細やかな工夫が関わってきます。
また、設計だけでなく暮らし方もセットで考えることが大切です。カーテンの開け閉めや、家具の配置、部屋の使い方によっても、光の届き方は大きく変わります。
自然の力を活かして、無理なく、快適に暮らす
その第一歩として、昼光利用の視点を取り入れてみませんか?